理事長挨拶

東京医科大学乳腺科学分野の石川 孝と申します。このたび、本学会の第7代理事長を拝命いたしました。本学会は、2012年3月に「乳癌手術における根治性と整容性の追求」を目的として、日本形成外科学会と日本乳癌学会が共同で立ち上げ、今年で12年目を迎えます。理事長は両学会が交代で務めており、私は形成外科の三鍋俊春先生からバトンを引き継ぎました。
乳癌の治療は薬物治療の進歩により、特に女性ホルモン受容体陰性の症例では手術の省略すら現実味を帯びてきています。治療における手術の位置づけが変わりつつある中で、私たち乳腺外科医は、次々に開発される新規薬剤に翻弄されている感もあります。しかし、手術は依然として最も重要な治療法であり、過不足のない手術がこの疾患の治療の基本であることは今後も変わらないと思います。
本学会は、創設の契機となった乳房用エキスパンダー・インプラントの登録と管理や合併症の調査を中心に、さまざまな活動を展開してきました。しかし、乳房再建の普及や啓発という点ではまだ十分とは言えず、特に地域による格差が問題となっています。また、乳房温存術の整容性を高めるためには、まだまだ術式を改良する余地があります。さらに低侵襲性治療、内視鏡やロボット手術、脂肪移植といった新しい治療法に関しても話題に事欠きません。
この分野に興味を持つ若手医師のリクルートや、市民への啓発活動のために、ホームページの活性化やCadaver surgical trainingの導入、さらにロボット手術で先行する韓国や台湾の学会との連携など、新しい取り組みも行っていきたいと考えています。
日本乳癌学会の理事でもある東京科学大学 形成・再建外科学分野の森 弘樹先生に副理事長をおつとめいただいて、これまで以上に形成外科と乳腺外科が密接な連携を図りつつ、本学会の発展に寄与し、乳癌治療の進歩に貢献してまいります。これからの2年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。
本学会歴代理事長(敬称略)
- 第1代 園尾 博司 (乳腺外科)
- 2012年8月~2014年10月
- 第2代 大慈弥裕之 (形成外科)
- 2014年10月~2016年10月
- 第3代 中村 清吾 (乳腺外科)
- 2016年10月~2018年9月
- 第4代 朝戸 裕貴 (形成外科)
- 2018年9月~2020年10月
- 第5代 津川浩一郎 (乳腺外科)
- 2020年10月~2022年10月
- 第6代 三鍋 俊春 (形成外科)
- 2022年10月~2024年10月
- 第7代 石川 孝 (乳腺外科)
- 2024年10月~現在